健康保険の被扶養者認定を受ける際、失業給付受給権の放棄とは
健康保険において、「扶養に入る」とは、正確には「被扶養者として認定される」と表現します。被扶養者として認定されるためには収入基準があり、認定対象者の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金保険法の障害等級に該当する場合は180万円未満)、かつ、被保険者(従業員本人、このケースでは質問者であるあなた)の年間収入の2分の1未満となっています。よくある誤解ですが、同じ”扶養”といっても、所得税法における”扶養”(控除対象配偶者・控除対象扶養親族)とは、収入の対象範囲も金額も異なる、似て非なる制度であることに注意が必要です。
さて、ここでいう年間収入には、各種の社会保険制度から支給される保険給付も含まれます。保険給付とは、例えば、健康保険の傷病手当金、年金制度の老齢基礎年金・老齢厚生年金等のことであり、雇用保険の失業給付(正確には基本手当)も対象となります。
失業給付を受給中の人について、被扶養者として認定されるためには、年間収入130万円を満たすために、一日あたりに給付される額(基本手当日額)が3,611円以下(≒130万円÷360)でなければなりません。この場合、収入基準を満たしていることを証明するためには、雇用保険の「受給資格者証」(基本手当日額が記載されている)を全国健康保険協会各支部に提出すればよいことになります。
では、失業給付をハナから受給するつもりがない場合はどうでしょう。いくら口頭や書面で「今後、失業給付をもらいません」と申し出たとしても、退職時に交付された離職票が手元にあると、気が変わればいつでも受給手続を取ることができてしまいます。全国健康保険協会としては、その申出だけでは、信用できないというわけです。この場合には、ハローワークにて失業給付の受給権を放棄した証明をしてもらう必要があります。具体的には、手元の離職票に、「法第4条第3項不該当」の記載を受けます。雇用保険法の4条3項には、「失業」の定義として、「被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態」と定められています。この条項に不該当ということは、「労働の意思がなく、失業の定義にも該当しないので、失業給付はもらえません」という証明になるわけです。
まず被扶養者になられる方がハローワークに行き、離職票に「4条3項不該当」の証明をしてもらい、その離職票を被保険者が勤務する事業所を通じて全国健康保険協会各支部へ提出して、被扶養者認定を受けることになります。