労働基準法とは

まず、そもそも労働基準法とはどういう法律でしょうか?
労働基準法は、労働者の方が、働く上での労働条件の原則や決定についての最低限の基準を定めた法律で、労働者保護の観点から作られています。
この最低基準については罰則と行政監督つきで設定されています。罰則とはつまり、例えば法定労働時間の定めに違反した場合は、「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」といった規定があるということです。また、法律を順守させるための行政監督は、労働基準監督署が行います。
次に、この労働基準法を理由として、労働条件を引き下げることは許されません。例えば、施設が昔から労働基準法を上回る労働条件で働かせていたのに、「いや、労働基準法ではこうなっているから」という理由で、あえて労働条件を引き下げてしまうような場合が該当します。
では、逆に労働基準法の定める基準を下回るような労働条件で雇用契約を結んだり、就業規則に規定を設けたりしたらどうなるのでしょうか? 例えば、1年以上勤務しなければ有給休暇は与えないとか、新人は勉強させていただく立場だから残業申請はできないとか・・・。こういった労働条件は無効となり、その場合は、労働基準法の基準の内容が自動的に適用されることになります。

法定労働時間とは

労働基準法では、「法定労働時間」というものが定められています。法定労働時間は、休憩時間を除いて、原則として1日8時間一週間では40時間と決まっています。ただし、医療機関の場合、職員が9名以下であれば、一週間の法定労働時間は44時間となります。
法定労働時間とは、この時間を超えて労働させることができない時間を言います。これに対して、所定労働時間という言葉があります。
所定労働時間は、皆さんの施設がそれぞれ独自に定めることのできる労働時間のことです。この所定労働時間については、あくまで法定労働時間の範囲内でなければいけませんよ、ということです。
でも、皆さんの業界では、2交代制など1日14時間とか、16時間といった所定労働時間を定める場合がありますよね。これは、のちほどご説明する「変形労働時間制」を採用している場合に限られます。
そして、もう一点。法定労働時間を超えて労働させることはできないと言いましたが、現実に皆さん、法定労働時間を超えて残業されていると思います。実はこれも、36(サブロク)協定というものが締結・届出されていることが前提となります。この36協定についても、のちほどご説明します。

法定休日とは

次に、労働基準法では、休日についても定めがあります。
法定休日
として、原則、毎週少なくとも1回の休日を与えなければなりません。ただし、例外的に、4週間で4日以上の休日を与えることでもOKとされています。
この法定休日は、原則として暦日、つまり午前0時~午後12時の休業をいいます。つまり、夜勤明けの日は、たとえ次の勤務まで24時間空いていたとしても、法定休日を与えたことにはならないので注意が必要です。
なお、法定休日に労働させる場合も、時間外労働と同様、36協定が必要となります。

休憩とは

労働時間が6時間を超える場合には、少なくとも45分以上、労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間以上の休憩を、労働時間の途中に与えなければなりません。
皆さんの業界では、なかなかまとまった休憩が取れないこともあるかもしれませんが、分割してでも、少なくとも法定の休憩時間は確保しなければなりません。
また、基本原則として、休憩中は労働から解放されていること、そして、労働者の自由に利用させなければならない、いうこともあります。
施設によっては、休憩時間中の外出に制限をかけている場合もありますが、施設内で自由に休息できるのであれば、必ずしも違法にはならないという行政通達が出されています。(参考:昭和23年10月30日 基発1575号)

変形労働時間制とは

法定労働時間の説明で出てきましたが、2交代制などのように、8時間を超えて所定労働時間を定める必要があるときは、労働基準法上、「変形労働時間制」の採用が必要となります。
変形労働時間制には、1年単位の変形労働時間制や、1か月単位の変形労働時間制などがありますが、1か月や4週間サイクルで勤務シフトを組むことが多い医療機関で採用されているのは、基本的に1か月単位の変形労働時間制であるといっても過言ではないと思います。
そこで、1か月単位の変形労働時間にしぼってご説明します。考え方としては、あらかじめ労使協定や就業規則へ規定しておけば、1か月以内の一定期間を平均して週40時間以内、ただし職員9人以下であれば44時間以内になるように勤務シフトを組むことにより、日や週によって法定労働時間を超える所定労働時間を定めることが可能になる、というものです。

 そうは言っても、1か月以内の一定期間をいちいち平均して週当たりの時間をチェックするのは面倒なので、実務上は次のように考えます。
たとえば、4週間でシフトを組む場合、所定労働時間が合計160時間以内になるようにシフトを組めば、平均したときに1週当たり40時間以内となります。同じ考え方で30日であれば171.4時間以内、31日であれば177.1時間以内。この時間内でシフトを組めば、1日12時間とか、1週45時間といった、一見、法定労働時間を超える所定労働時間があったとしても、平均すれば週40時間以内になるのでOKという考え方になります。